CO₂排出量“〇〇トン”って、実際どれくらい?――CO₂排出量を暮らしに置き換えてみたら

公開日:2025/12/09

~数字だけでは伝わらない!CO₂排出量を「暮らしの感覚」で伝える技術~
脱炭素経営は今や、規模や業種を問わず、企業の信頼性を高め、コスト削減にもつながる「経営の武器」になりつつあります。
環境問題への関心が高まる中、多くの企業や公的機関がCO₂排出量削減に取り組んでいますが、その成果を取引先や地域社会へ効果的に伝えられていますか?また、ご自身で「自社の排出量はどのくらいの規模に相当するものなのか?」と具体的にイメージできていますか?
IDEC横浜の脱炭素支援では、企業様と一緒にCO₂排出量の「見える化」を実践しています。
「見える化」によって、自社が年間〇トン(t)のCO₂を排出していると把握できたとしても、それが多いのか少ないのか──そうした疑問が自然に生まれます。
本記事では、努力の成果を「見える化」し、より身近に、そして説得力を持って伝えるための工夫について解説します。

1.数字の壁を乗り越える:なぜ「見える化」が必要なのか

企業の環境報告書などで「年間排出量○トンを削減しました」と記載されていても、この「〇〇トン」という数字が、どれほどのインパクトを持つのか、直感的に理解するのは非常に難しいものです。数字は客観的で正確ですが、私たちの日常生活の感覚とはかけ離れており、具体的なイメージを持ちにくいからです。

脱炭素経営の成果を取引先や社会に「伝えられる形」にする工夫、すなわち排出量の「実感」をつかむ方法が必要です。そこで重要になるのが、企業の排出量を「身近な行動」や「暮らし」に置き換えて説明する工夫です。

2.実践!排出量を「家庭」や「車」に置き換える

取り組みの成果を具体的に伝える最も効果的な方法は、排出量を家庭や自動車の排出量を例に換算することです。

換算の基準となる具体的な数字

  1. 家庭(1世帯)の年間排出量 :日本の標準的な家庭(1世帯)の年間排出量は、平均で約3.6トン(3,608 kg-CO₂)です。この数値には、照明や家電の電力使用、暖房・冷房・給湯、そして自家用車の利用など、日々の暮らしで排出されるCO₂が全て含まれています。(参考:国立研究開発法人 国立環境研究所 『日本の温室効果ガス排出量データ』2025年4月25日発表より
  2. 普通車の走行距離 :自動車の走行距離に換算する方法も有効です。一般的なガソリン車(平均)の場合、約8,300km走行すると1トンのCO₂を排出するとされています。

削減インパクトの伝え方

これらの換算基準を使うことで、削減量のインパクトが劇的に分かりやすくなります。

例えば、もし御社が年間36トンのCO₂を削減できたとしたら、それは「年間36トンの削減」と伝えるだけでなく、「一般家庭10軒分の年間排出量に匹敵します」と説明できます。あるいは、「ガソリン車で36万km走行した際に排出されるCO₂量に相当します」と伝えることもできます。

このように「家庭何軒分」「車何台分」といった身近なことに置き換えることで、削減効果をぐっとイメージしやすくなるのです。

3.「見える化」がもたらす戦略的な効果

排出量の分かりやすい伝え方は、単なる説明以上の意味を持ち、企業価値を高める「経営戦略」として機能します。

  • 取引先への信頼性向上: 「当社は○トン削減しました」という数字だけでは伝わりにくい真剣さが、「家庭10軒分に相当します」と伝えることで、相手に強いインパクトを与え、取り組みへの信頼性が向上します。
  • 従業員のモチベーション向上: 社内で「私たちの努力で車○台分のCO₂排出量削減、年間〇〇円のコスト削減につながった」と共有すれば、社員は日々の業務が持つ社会的意義を実感できます。この実感が、さらなる改善への意欲を高めます。
  • 社会への発信力強化: 自治体や地域社会に対しても、数字だけでなく「生活に置き換えた表現」を用いることで、取り組みに対する共感を呼びやすくなり、発信力が強化されます。

4.次のステップへ:伝わる形に変えること

脱炭素経営は、単なる環境対策で終わらせるのではなく、企業価値そのものを高めるための取り組みです。

すでに取り組んでいる企業にとって、次のステップは、成果を「見える化」し、誰にでも理解できる形で伝えることです。

「CO₂排出量〇〇トン」という客観的な数字を、家庭や自動車の利用など身近なことに置き換えて説明する。このシンプルな工夫が、取り組みの成果をぐっと身近に感じさせ、強い説得力を持って社会に伝わる形へと変えてくれます。

脱炭素化への取組努力を「伝わる形」に変えること。それが、企業の信頼性を高め、社会とのつながりを強化する大切なポイントです。

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